異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「そんなに見ないでくれよ。まだ産まれてもいないお腹の子に嫉妬だなんて」


 一回り年上の総介さんに対して可愛いと思うのは失礼なのだろうか。でもまだ産まれてもいない赤ちゃんに対して嫉妬だなんて、可愛くて抱きつきたい、けれど運転中なので我慢だ。


「……総介さんが拗ねてる姿がつい珍しくて、嬉しいです」


「顔に出さないだけでもう何度も君の周りにいる男に嫉妬をしているよ。真緒と名前を呼んでいるだけで俺の妻の名前を呼ぶなって思ってしまうくらいね」


 身体中の細胞が、血液が熱く燃え上がるように沸騰しているようだ。愛される事がこんなにも嬉しいことだなんて、総介さんに出会わなければ知ることは無かった感情だ。


「まぁ俺の嫉妬話はこれでお仕舞い。今日のデートはもちろんクラシックコンサートだからね。前回のコンサートの時はまだ気持ちが通じ合って無かった時だったから。本当あの日の楽しかったことや辛かったことが昨日のように思い出せるよ」


 膝の上に乗せていた手にグッと力が入る。
 私も鮮明にあの日のことを思い出せる。総介さんに酷いことを言った自分。


「あ、あの時はそうするしか考えられなくて、本当に後悔してます。でも……総介さんが私を諦めないでいてくれてよかったです」


「俺は真緒のことを諦めるつもりは毛頭無かったよ」


 運転しているから視線は前を向いているが総介さんの真剣な表情が更に私の身体を熱く火照らせた。

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