異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 着いた場所は見覚えのある会場で胸がドキドキしてきた。あの時とは違う心情。繋いだ手から伝わる総介さんの熱と私の熱が指先と手のひらを伝い絡み合う。熱すぎてとけてしまいそうだ。


 総介さんの隣の座席、この距離感懐かしくて、心地よくて、それでも私の心臓はいつだって高鳴ってしまう。


「そろそろ始まるね。もし体調が悪くなったりしたらすぐに言うんだよ」


 耳元に総介さんの優しくて穏やかなピアニッシモのバリトンボイスが注ぎ込まれる。
 私も同じピアニッシモの声で総介さんに顔を近づけ「はい」と頷いた。
 近づいている顔にそっと大きな手のひらが伸びてくる。頭の後ろを掻き抱かれさらに距離が近づいた。ジリっと私と総介さんの間の空気が濃くなりキスをする寸前のよう。見つめられ続け彼に囚われたように視線をずらすことが出来ない。


「そ、総介さん?」


「ずっと我慢していたんだ。初めて真緒を抱いたウィーンのホテルに内装を似せた部屋を部屋を今夜予約してあるから、君を隅々まで抱かせてもらうよ。真緒、愛してるよ」


「私も愛してます……ん……」


 開演のブザーとともに静かに重なった唇から流れ込む彼の熱い欲情に答えるよう舌に絡みついた。

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