異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜

「今日は見学の人が二人見えてるけど気を逸らすなよ〜。じゃあ新世界やるから用意して」


　今回のメイン曲でもある、ドヴォルザーク作曲の『交響曲第九番新世界より第二楽章』オーボエを持ち替えてイングリッシュホルンを私は演奏する。イングリッシュホルンの代表曲とも言える第二楽章は綺麗な和音の中でただ一人イングリッシュホルンがメロディーを奏でるのだ。『家路』や『遠き山に日は落ちて』はテレビで流れたり聞き覚えのある曲だと思う。これらの曲は元はこの新世界の第二楽章に歌詞がついたものだ。
　オーボエの倍以上ある大きさのイングリッシュホルンは肺活量も必要でこの家路を吹き切った後はかなり疲れる。でも凄く考え深く奏者の力量が試される。いかに切なく始まり綺麗で澄んだ音を奏でられるか、私なりに表現して吹き切ったつもりだ。