異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「そんな……どうして私がここにいるって分かったんですか?」


 総介さんの優しく大きな手のひらが暖かく私の右頬に添えられた。まるで宝物を触るかのように優しく包み込むように。


「真緒の演奏を聞きたいと言っただろう。今日のイングリッシュホルンのソロはとても胸に響いてそそられたよ。その場で君を抱きしめてめちゃくちゃにしてやりたいと思ってしまうほどね」


 甘い言葉の連続でなんだかのぼせてしまいそうだ。大人の男性とはこうもストレートにものを言うのだろうか。それともそれは総介さんだからなのか。
 右頬に添えられた手のひらにほんの少しだけ力が入った気がした。


「それにほら、これを俺の部屋に忘れていったよ。それともワザと忘れていったのかな?」


 スッと頬から離れていった彼の手は、私の頬の代わりにあの日にしていたバレッタを乗せている。忘れていた事さえも気づかなかった。でもまさかバレッタを返す為に私のところまで来てくれたんだろうか。


「なっ……違いますっ、でもわざわざありがとうございます」

 バレッタを受け取る……はずが何故が私の手はギュッと彼の手に握られ振り解けない。私の手と彼の手のあいだにあるバレッタが少し邪魔だと感じてしまう。
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