異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「真緒の事がなかなか見つからなかったらシンデレラのようにこのバレッタが世界で一番似合う女性を探してくれと部下に頼む所だったよ」


 目を細めて笑う総介さん。穏やかに笑っているが彼の瞳は凛として真剣そのものだ。


「俺は君が、真緒が好きなんだ。こんないい歳した男が一回りも年下の女性に必死なんて信じてもらえないだろうけれど、俺は君を離したくないんだ。真緒は俺の事が嫌い……なのか? だからあの日俺は一人取り残されてしまったのだろうか」


 大の大人が眉を下げている。悲しそうな、寂しそうな瞳。


「そんなっ、嫌いなはずないじゃないですか!」


 私が総介さんを嫌いなんてそんな事あるわけない。あんなにも優しくしてくれ、不安を取り除いてくれたのは総介さんだ。彼と出会えたからこそ無事に一人でのウィーンを楽しめたんだから。嫌いなはずない。総介さんといると楽しいのに、なんだか安心して落ち着く。落ち着くけれど緊張してドキドキが止まらない。好き、好きだけれど、私で良いのかと自信もなければ、私には守らなければならない約束がある。
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