異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「じゃあ俺からもう離れないでくれ。俺はもう真緒じゃなきゃダメなんだ。好きなんだよ」


 なんて言葉を返せばいいのか喉の奥で言葉が詰まる。出てきたいと言っている『私も好き』と言う言葉が勇気が出なくて私の喉の奥で詰まっている。こんなにも不釣り合いな私にハイスペックな総介さんの相手が務まるのだろうか。
 出てこない言葉を濁すように視線をずらし窓の外を見る。私の乗っているこの車はどこに向かっているのだろう。行き先も分からない。ただ見えるのはウィーンのあのおとぎ話のような景色とは違う、闇の中を突き進むだけだった。唯一空に浮かぶ星が輝き闇を照らしてくれている。


「社長、着きました」


 ……社長?


「ああ、助かったよ。ちょっと外に出てくるから待っててもらえるかい?」


「かしこまりました」

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