異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「……海だ」


 鼻を抜ける塩の匂いとザザーっと夜空に響く波の音。沢山の小豆をザルの上で転がして波の音を表現する曲があるのだがまさに同じような音だった。なんて穏やかで心地の良い波の音なんだろうか。


「本当なら高級なホテルにでも連れて行ってあげたかったんだが時間も遅い。若い子は夜の海がロマンチックで好きだとネットで見たのだが、真緒はどうだったかな? あまり好きではなかったかい?」


 総介さんがインターネットでロマンチックな事を検索していたなんて想像すると少し笑えてくる。検索なんかしなくてもすぐにロマンチックな事が浮かぶような人だと思っていたから、ますます総介さんの新しい一面を知れて嬉しくなってしまう。


「いえ、とっても好きです。この波の音がとても心地よくて、海なんて何年ぶりだろう。すごく久しぶりに来ました」


「そうか、なら良かった。少し歩こうか」
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