異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 静かなエンジン音と共にゆっくりと走り出す。静かな車内に二人きり。緊張して手に汗をかいてきた。音楽がかかっていない車内の中で自分の心臓の音が更に大きく聞こえ総介さんにも聞こえてしまっているんじゃないかと思うくらいドキドキとうるさい。総介さんと車に乗るのは三回目だがウィーンの時はタクシーの後部座席、先週も後部座席で隣に座り、彼が運転している車の助手席に乗るのは初めてだ。


「飲み物はお茶でも良かったかな? ドリンクフォルダーに入っているのは真緒のだから飲んでね」


「ありがとうございます。お茶大好きです」


「コーヒーと迷ったんだけどお茶にして正解だったな」


(ドリンクコーナーの前でお茶かコーヒーで悩んでくれたって事だよね?)


 一つ一つの言動が嬉しい事ばかりでその度にグッと胸が熱くなり口が緩むのをバレないよう真一文字につむる。


「総介さんは車では音楽とか聞かないんですか?」


 CDもラジオも流れない車内は私達の声がよく聞こる。逆に聞こえすぎて彼の吐息音もしっかりと聞こえなんだかその色気にのぼせてしまいそうだ。


「ああ、音楽を聞くのは好きなんだけど好きだからかな、のめりすぎちゃって運転どころじゃなくなるんだよ。それに今日はほら、真緒の一言、一言を聞き逃したくないからね。もし音楽を聞きたいなら何か好きなものをかけてもいいよ。スマホから流せるようにはなっているから」
< 73 / 170 >

この作品をシェア

pagetop