異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「なるほど、確かにその気持ち分かります」


「ははっ、真緒なら分かってくれる気がしてたよ」


 総介さんは運転しているから視線はずっと前を向いている。よかった……私の顔を覗き込まれなくて。今日一日私の顔の熱が冷めることはなさそうだ。
 窓の外を流れる景色は段々と背丈が高い建物が多くなり私の住んでいる田舎の緑豊かな景色が見えなくなっていく。どこに向かっているのか全く検討がつかない。


「総介さん、どこに向かってるんですか?」


「今日はオーケストラを観に行こうと思ってね。ちょうどチケットが手に入ったんだ。真緒はもちろんオケの演奏好きだろう?」


「好きも何も好きしかないです! 楽しみだなぁ。何の曲が聞けるのかな」


「あとでパンフレットを渡すからね。コンサートの前にどこかでランチをとろうと思うんだけど真緒は何が食べたい気分とかあるかな?」


「好き嫌いはないのでなんでも食べれちゃいます!」


「はは、そうか、ならオススメのお店があるからそこで食べて行こうかな」


 食いしん坊みたいな言い方をしてしまった事に後から気づいた。は、恥ずかしい。どうりで総介さんも笑っているわけだ。でもなんだろう、恥ずかしいけれど嬉しい気持ちの方が大きかった。なんだか今日は彼がたくさん笑ってくれている気がして、私も自然と緊張がほぐれていき車内ではたくさん話をした。
 ベラベラと話す私に相打ちを打って話を聞いてくれる。出会った時からずっとそう。彼の声が心地良い、とても安らぎ、私に安心感を与えてくれるのだ。
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