異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 東京と記された青い道路標示に入り、一気に車線が五、六本に増えた。オーケストラを観に行くとは聞いてきたがまさか都内だとは千葉県の田舎に住む私は考えてもいなかった。でもそうだよね、総介さんとのデートだもん、ハイスペックなはずだよ。
 なんだか迷路のように入り組んだ道を進み車のスピードが段々と落ちてくる。お店の駐車場らしき場所に車が停まった。


「着いたよ。ちょっと長旅で疲れただろう、お腹を満たして休憩しよう」


 二時間も運転し続けた総介さんの方が疲れているはずなのにそんな素振りは一切出さない。助手席のドアを開け自分で降りると「本当真緒は最高だよ」と不意に抱きしめられ何が最高なのか全く分からなかったが嬉しくて少しだけ彼の背中に手を回した。
 駄目だと思っているのに拒めない。掬い上げられた手、指と指を絡め恋人繋ぎをする。指の先からもの熱を感じ、彼の指の太さ、手のひらの大きさをしっかりと感じ取れる。
 ゆっくりとお店のドアが開かれた。


「九条様お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


 スタッフに出迎えられ自宅のようなこじんまりとした外観からは想像もつかなかったた店内。内装は見るからに高級そうな品のあるレストラン、自分には場違いすぎて足がすくみそうになる。でも今日だけだから……総介さんの隣に立っていて恥ずかしくないように私は背筋をピンっと伸ばし直した。
 カウンター席に個室、落ち着いたグレーの色合いを基調にした店内にオレンジ色のぼんやりとした暗めの照明がいい雰囲気を作り上げている。お洒落なカウンター席の椅子を引かれ腰を下ろす。何度も彼にエスコートしてもらっているが普段されていない事なので慣れないし、全身を見られているようでちょっと恥ずかしい。
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