異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「ここはね、パスタが絶品なんだ」


 ズラリと英語で書かれたメニューは見てもちんぷんかんぷん。本当英語が全く出来ないのによく一人でウィーンまで行けたな……
 クスクスと隣から笑い声が聞こえる。もちろん笑っているのは総介さんだ。


「真緒、君は本当に素直でいい子だね。英語で読めないって顔に出てるよ」


「なっ! 総介さん私が英語で苦手なの知ってるくせに、意地悪ですね」


「ごめんごめん。つい可愛くて、真緒がどんな反応するのか見ていたくてね、でも想像通りいい反応だったよ。嫌いな物がないならオススメのメニューを頂こうか」


 カウンター席から見える厨房。シェフの巧みな技により素早く食材が料理に変わっていくところを見ながら料理を待つ。あっという間に私の目の前にお洒落なお皿に盛り付けされたカルボナーラが置かれた。濃厚そうな卵の黄身が艶々とパスタの真ん中にあり、割ってしまうのが勿体ないくらい。


「すっごく美味しそう。あ、美味しそうじゃなくて美味しいに決まってますよね」


「はは、そうだね。召し上がれ」


 両手を合わせ頂きますと小さな声で言う。品よく、品よく。そう思えば思うほど手が震えてくる。こぼしたらどうしよう、テーブルマナーは……フォークとスプーンだから大丈夫かな? 幸い個室には何名かお客様がいるようだがカウンターには私たちだけだ。チラッと横目で総介さんを見るとまだ食べていない。むしろ嬉しそうな表情で私が食べるのを待っているようだ。ますます緊張して、手が震えてくる。
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