異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 強い日差しの中、あちこち行き交う人々の流れに沿って私と総介さんも会場に向かって歩いている。どんなに日差しが強くて熱くても私の指と彼の指が絡み合った手を総介さんは離さない。ジワジワと手のひらの間に汗をかいてきても離さない。私も離さない。離したくない。
 ドンっと目の前に聳え立つ大きな建物。コンクリートの塊のような建物は東京でも有名なコンサートホールだ。都内のことは全く知らない私でさえ知っている。
 一体何度目だろう。また私の初めてを総介さんと一緒に居られるなんて、嬉しくて足がスキップし出しそうだ。


「なんの曲が聞けるのか楽しみです」


「真緒の好きな演目があるといいけど」


「私嫌いな曲なんてないんで大丈夫ですよ」


 初めて踏み入れる大きなコンサートホールは柱が全てコンクリート剥き出しで外観と同じだったが赤の座席との対比がよく、座席は五階まであるので入った瞬間の大迫力と言ったら、どんな響きをするホールなんだろう、こんなに人が入ったら音はどんな風になってしまうんだろう。吸収され過ぎでしまうのかな? 響きが薄くなったりするのかな? 気になることが沢山ありすぎる。
< 79 / 170 >

この作品をシェア

pagetop