異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜

「真緒ちゃん顔色悪いけど大丈夫？」


「ちょっと風邪引いちゃったみたい。けど元気だから大丈夫です！」


　絵里さんは心配そうに私の顔を覗き込んでくる。本当は少し気分が悪かったけれど心配かけたくなくて無理に笑顔を作って「元気元気！」とガッツポーズしてみせた。


「本当？　真緒ちゃんは一人で抱え込んで無理しすぎる時があるよ。悩んでる事があるなら言いなよ？　相談くらいのるからね」


「絵里さん……ありがとうございます」


　自分に気合いを入れるように力強くパンパンと両手を合わせ音楽室いっぱいに鳴る音を一度止め、いつも通りチューニングを行う。やっぱり風邪を引いてしまったんだ。ロングトーンをするのが苦しくて息が切れやすい。何度もブレスをしてしまう。


（やっぱり家に帰ったらすぐに風邪薬飲もう……）