異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
――おかけになった電話をお呼び……

「くそっ……」


 日本についてからも何度も電話をかけた。何百回と聞いたこの心のない機械音。彼女に拒まれているのは分かっている。けれど納得いかないんだ。あの日デートをした真緒からは一ミリたりとも俺を嫌っている空気を感じ取れなかった。むしろ俺を見る目からは好意さえ感じ取れたと思っていたのに。俺の勘違いだったのかもしれない。でも、なら拒まれている理由が知りたい。
 しつこい男は嫌われる。そんな事分かりきっているけれどどうしてもダメだ。彼女の事になると自分を止められない。


(今日は土曜日、時間は……五時、今なら楽団の練習に行っているかもしれない)


 今から向かえば七時頃には着くだろう。
 急いで車に乗り込んだ。高速道路を乗り換え何度も見た田舎道に出る。


 あと少し、あと少しで真緒に会える。
 心が、気分が弾む。口元が緩んでしまう。
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