眠り王子の専属抱き枕になりました!?
『ガシャッ!』

椅子は倒れなかったものの、彼と私は派手な音と共に椅子から落ちてしまった。太股に床の固さと冷たさを感じる。この床は普段は高校生達の若き汗と情熱が染み込み彼らと共に湧きたっているのだろう。しかし今日ばかりは粛々と進む式の空気を吸い込んで静まりかえっていた。

彼は落ちてもまだ気持ち良さそうに寝ている。しかも今度は私に預けているのは頭だけではなく上半身全てだ。

床に座っている為、周りからの好奇の視線が上から(やり)のように降ってくるように感じて痛いくらいだ。校長先生の声も途切れている。さすがに『あの・・・!』と彼に声をかけると『ん・・・。』と薄目を開いた。その瞳を見た途端息を呑む。

まるで宇宙に散らばる無数の星を映しているかのような美しい瞳。思わず目を奪われているとあろうことか彼は私の体に腕を回してきた。まるで抱き枕を抱きしめるように。
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