眠り王子の専属抱き枕になりました!?
「嫌!嫌だよ、もう会えない上に忘れるなんて・・・私、綿星くんのこと絶対誰にも言わないよ。だからお願い、記憶だけでも・・・。」

滲んできていた涙がついに雫となってこぼれた。

「俺だってずっと一緒にいたいし忘れてほしくない。けど、規則なんだ。これでも随分特別に配慮してもらってる。その分俺は獏として頑張らなくちゃいけない。」

綿星くんの星空のような瞳に圧倒されるくらいの固い決意が見えて、諦めるしかないのだと悟る。記憶をなくすことを避けられないのならば、その前にどうしても自分の気持ちを伝えたかった。シャボン玉みたいにぱちんと消えてしまう恋だとわかっていても───。

「私も・・・私も綿星くんが好き。ずっと好きだったの。本当はもっと綿星くんのことが知りたかった。」

「!」

綿星くんは美しい顔を切なそうに歪めると私を苦しいくらいに抱きしめてくれた。
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