眠り王子の専属抱き枕になりました!?
「・・・そろそろ時間だ。」

そう言って綿星くんは私から離れると本来の姿───獏───に戻った。

「・・・ありがとう。綿星くん。」

震える声でそう伝えるので精一杯だった。もう会えなくても『さようなら。』は言いたくなかった。

「俺の方こそありがとう。楽しかった。お互い自分の世界で頑張ろう。」

綿星くんは何かを吹っ切るかのようにそう言うと光に包まれた。いや、彼が光を発したと言った方がいいかもしれない。

まばゆい光を浴びながら『お願い、ひとかけらだけでもいいから私の中に今の綿星くんとの思い出が残りますように!』と強く願った。

部屋が暗くなり綿星くんの姿がなくなったのを確認した瞬間、私はベッドに倒れこみ眠りについた。その頬を流れ星みたいに煌めく涙が伝っていた。
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