クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
「旦那様…。」
「愛されてなかったか…。やけに堪える言葉だな…。」
「そんな事、ございません!」
「田辺さん、笑って下さい。30過ぎた男が妻に捨てられたんですから。」
柊哉は自虐的になっていた。
「旦那様…。私も、一時は疑ってしまいました。申し訳ございません。」
「田辺さんも…。」
「今は、誤解だったと確信しております。」
「和優は、誤解したままなんですね。」
「おそらく…。早くお探しになられないと。ご実家でしょうか。」
「実家なら…。探すなとは書かないでしょう。」
「でしたら、なおさら…。」
「小西さん、和優は自由になりたかったんでしょうね…。」
「旦那様…。」
「こんな大男に囲い込まれるより、自由に…。」
「どうして、そんな事…。」
「彼女を壊してしまいそうで、怖かったんですよ。」
ポロリと柊哉は弱音を吐いた。
いつも強引に仕事を勧めている男が、まるで少年のように心細く本音を吐いた。
「旦那様、人間の身体はそんな簡単に壊れませんよ。
むしろ、心の方が脆いんです。」
「心…。」
『和優が、自分の目の届く場所から消えた。』
確かにその事実は、柊哉の心に深く突き刺さっていた。
彼女が近くにいない事が、こんなにも自分の心を壊すのかと…恐ろしいほどに。