クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす


 和優に、父や柊哉からの連絡が入らないのには理由があった。

和優は店舗の購入資金に充てる為に、自分名義の株等をいくつか売却した。
それを証券会社の担当から伝え聞いた実影が、柊哉を呼び出したのだ。


「…和優が、あちこちの株や債券を売ったらしい。聞いているかい?」
「いえ…。」

「君の会社が資金繰りに困っている訳では無いんだな。」
「勿論です。」


和優が姿を消してから、柊哉は何もしていない訳ではなかった。
追いかけたり連絡したりはしていないが、
何処に住んでいて、何をしているのかはおおよそ把握していた。

ただ、義理の父にどこまで話すべきか迷いがあった。
別居中だと知られるのは仕方ないが、柊哉は和優との離婚など考えていない。

「おそらく店を出す準備資金にしたものと思われます。」

「和優が、店?」
「はい。」
「いったい、どうなってるんだ?君たちは?」

実影は驚いて柊哉に問い質した。

「別居中です。」
「離婚するという事かい?」

「いえ、自分にそんなつもりはありません。」




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