クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
涼真が実家に帰っていった後、柊哉は許可を得てずっと和優に付き添っていた。
「和優…。」
横たわる彼女の側で、何度も何度も小さな声で『妻』の名を呼んでいた。
「う…ん。」
苦しそうに眉をひそめて、和優がうっすらと目を開けた。
「ここは…。」
「館山の病院だ。車で運んでる途中から意識が朦朧としていたね。」
「柊哉さん…ホントに、柊哉さんなの?」
「ああ。君に会いに来たんだ。」
「ウソ…。」
「謝って、俺の側に帰ってきてもらおうと思って。」
「理江さんは…お義母さんは…。」
「アイツが嘘を言ったんだ。母は君がいるのに他所の女をけしかける人じゃない。」
「そうよね。私、お義母さんに失礼だったわ…あの人の話を信じてしまって。」
「俺がちゃんと話せば良かった。田辺さんにも勘違いされてたよ。」
「田辺さんが?」
「あの人が怒ると滅茶苦茶コワイんだ。」
「フフツ。あなたが怖がるなんて…。」
「俺は、恐がりだ。君を失うのが怖い。」