クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
 

 『HONNMA』の入居しているビルは、汐留の近くにある。
高層ビルの上階部分をフロアごと借りているが、数年後には自社ビルを建設する予定だ。

柊哉はいつもの通り、夜が更けても会社で仕事をしていた。

「あれ?柊哉、まだ働いてるのか?」

ノックもせず社長室に入って来たのは、柊哉とは大学時代からの腐れ縁、
起業した時から一心同体の、上垣 司(かみがきつかさ)だ。

「もう、何やってんだか…。いい加減に社長室の隣の部屋片付けてよ!」

「ああ、すまないな。あそこは泊まるのにちょうど良い広さなんだ。」
「会社に泊まるって、どういう神経かなあ!新婚半年だろ。」

「いいんだ、この方が。」

「だって、奥さん待ってるだろ?」
「さあなあ…。」

平常運転の柊哉の態度に揶揄う気も失せたのか、司はゴシップを話し始めた。

「ま、噂じゃあ奥さんホストクラブ遊びしてたんだろ?お互い様か。」

「いや、彼女は友人の誘いでクラブについて行っただけだ。」
「そうなの?」

「和優の友人の仲間が厄介なんだ。遊びたい連中に振り回されているんだろ。」

「大丈夫なの?夜遊びして…身体弱いんでしょ。」

「まあ、大丈夫だろう。最近は落ち着いてるし。」

「会ってもいないのに、良く分かるね。」

「貴様のお陰だ。」
「あ、田辺さんか!」


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