クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
翌朝、早くに起きるつもりだったが、柊哉が目覚めると7時を回っていた。
別に仕事がある訳では無かったが、慌ててガウンのまま階下に降りた。
レースのカーテン越しに柔らかな朝の光が差し込むと、
古いながらも良く手入れされている屋敷の雰囲気が伝わってきた。
昨夜の無機質な冷たさが嘘の様に、穏やかな空気を感じる。
家の中のあちこちに目をやると、季節の花が飾られていた。
わざと小さな花瓶を選んでいるのだろう。机の上、サイドボードの上…
デッキテラスにも無造作にコスモスが活けてあった。
これまでの自分の人生とは無縁の世界にいる様で、柊哉は戸惑った。
「あ、おはようございます。」
和優がエプロン姿でキッチンから出て来た。
「お顔を洗ってきて下さい。朝ごはん準備できていますから。」
「え?君が作ったのか?」
「ええ…どうかしました?」
「いや、すぐに洗ってくる!」
我ながら、まるで小学生の様ではないか。
いそいそと洗面をすませ、柊哉はダイニングに戻った。