クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
テーブルの上にも小さな花瓶があって、愛らしい小花が活けてある。
新聞が置いてある席が自分の場所だろう。ゆっくりと柊哉は椅子を引いて座った。
和食の様だ。味噌の香りが急に空腹感を感じさせた。
『そういえば、昨日は何を食べたっけ…。』
仕事に夢中になると、ついコンビニの弁当かその辺の店に駆け込んで適当に食べていた。
アメリカに行った時は、食べ慣れたハンバーガーで済ませるだけだ。
今朝、目の前に並んだ手料理は家庭的ながらも美しい盛り付けだった。
食器も選び抜いているのだろう。流石、高遠家のご令嬢だ。
『だが、ご令嬢が料理なんてするのか…?』
「いただきます。」
味噌汁をひと口飲んだ。
「旨い…。」
思わず、声に出た。
「良かった。お口にあって。」
茶碗によそったご飯を運んできた和優が微笑んだ。
「君は、料理が出来るんだな…。本当に旨いよ。」
パクパク食べながら、珍しく柊哉は饒舌になっていた。
それは、美味しい手料理のせいだろうか、和優が微笑んだせいだろうか。