クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす

「良いんですか?」
「えっ?」

和優の耳元で、柔らかな声が聞こえた。
いつの間にか、ホストの一人が側に座っていたらしい。

「何の事かしら?」
「貴女のお金で彼女達、遊びまくってますよ。」

周りに気付かれないように、そのホストはニコニコ笑いながら辛辣な事を言う。

「あなたが気にしなくて大丈夫よ。チャンとお支払いしますから。」
「金額じゃなくて…、貴女は楽しんでないでしょ?」

「そう?楽しいわよ。」
「嘘ばっかり…。お酒も飲まないし、ホストに触りもしないし…。
 何のためにここに座っているんですか?」

いきなり問われて、じっくりとそのホストを見た。
顔立ちは幼くて可愛らしい。まだ10代にも見えそうな子だった。

「あなた、名前は?」
「カオル。ここではね。」

「ふうん、名前が沢山あっていいね。」
「え?」
「ここと、昼間とで別人になっちゃうんだ。羨ましいわ。」


カオルと名乗ったホストは、和優の頬をそっと両手で触ると
正面からその目を見つめた。


「わかんない?ボクだよ。和優ちゃん。」

金色に染めた髪と薄化粧している彼の顔をじっと見ても思い出せない。

「…誰?」




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