クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす


「改めて、カンパイ!」
「久しぶり!お互い元気で再会できたね、おめでとう!」

友人達から離れたボックス席で、涼真と乾杯しながら
和優は最後に彼と会った時期を思い出そうとしていた。

「私がMICS手術を受けた時…涼くんも手術を受けたんだよね。」
「そうそう。ボクはまだ小学生で、和優ちゃんは高校生になった頃かなあ…。」

病院には同じような心臓病の子供が何人かいて、皆んな仲良しだった。
当時、周りの子よりやや年上だった和優は、子供達のまとめ役を引き受けて
小さい子に本を読んだり、泣いている子に寄り添ったりしていた。

母をすでに失くしていたし、父親は仕事で殆ど見舞いに来られなかったから
子供達と触れ合う事で淋しさを埋めていたのかも知れない。

中には家族ぐるみで助け合う人達もいた。
水口涼真の両親は世話好きで、誰にも甘えられない和優を気に掛けてくれた。
和優を娘のように可愛がってくれた人達だ。

辛かった日々の中で、唯一というくらいの明るい思い出だった。





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