クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす



 和優は、順調にカオル(・・・)との浮名を流していた。

『人妻なのにホストクラブに通い、いつも同じ子を指名している。』

学生時代の友人達にそう認識させれば、彼女たちはその家族や知人にも
面白おかしく和優の噂をするから、きっと悪い評判は広まっていくだろう。

『柊哉さんの耳に入ったら、きっと嫌われるわ。』

夫より里見宏輔(さとみこうすけ)が何か言ってくるかもしれないが、無視しようと決めていた。



 10月になったある日、家政婦の田辺がスーツケースを出してきた。

「旦那様からのご連絡で、明日の土曜日からご一泊でお出掛けになりたいとの事でした。」

「スーツケースが必要なの?」

「お泊りになるとの事でしたから、ご準備なさいませ。」

「何処に行くのかしら、南?北?」
「詳しい事は存じません。」

佐渡の本間の家にでも行くのだろうか?それとも…?

「いいわ、どっちでもいいように準備するから。」
「お願いいたします。」


それにしても、家政婦に伝言するなんて。そんなに私と話したくないのかな。

和優は釈然としなかったが、スーツケースに下着や着替えを詰め始めた。

「あ、化粧品…小分けにしたいな…。」
 
旅行自体、和優は殆どした事が無いので、準備と言ってもよくわからない。
おまけにどんな所に泊まるかも聞いていないから、必要な物のイメージが湧かなかった。

沢山持ち歩きたくなかったので、旅行用の小物を買いに行こうと外に出た。


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