クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
和優は、基本的に電車は利用しない。
もしもの事を考えて、実家では運転手が常に送り迎えをしてくれたし
最近は、もっぱらタクシーを利用している。
人混みは苦手だし、息苦しさも感じる。
でも、これからは一人で買い物くらいは出来るようになりたい。
『渋谷くらいまで出かけようか、いっそのこと新宿まで足を延ばそうか…。』
迷ったが、新宿のデパートを目指す事にした。
タクシーで新宿へ行き、何度か利用しているデパートに入りかけた時、
「和優ちゃん?」
後から耳慣れた声が聞こえた。
「涼くん、こんなところで何してるの?」
「和優ちゃんこそ、買い物?」
薄暗いホストクラブでしか会っていない涼真がいた。
昼間の太陽の下で会うと、金に近い色に染めた髪がキラキラ光って見える。
少し伸びかけた地毛の黒さが目立って、売れないアイドルのような雰囲気だ。