クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
「着いたぞ。」
柊哉がそっと声を掛けてくれた。
昨夜は緊張して眠れなかったせいか、和優は少しウトウトしていたらしい。
柊哉の運転する車に乗っているから、安心して目を閉じられたのだろう。
「もう、着いたの?」
少し擦れた声で話しかけると、柊哉は頷いた。
「ここに知人の店があるんだ。」
「お店?」
車の窓から見る限り、のんびりとした田園風景だ。
そろそろ稲刈りの時期かもしれない。黄金の稲穂が重く垂れている。
「こんな場所に、お店があるの?」
車は、小学校の校門付近に止めたようだ。
ぐるりと見渡しても店舗のような店構えは見当たらない。
「この学校がそうなんだ。」
「小学校が、お店?」
和優が不思議そうに校舎を見たら、小さな黒板のような物が立てかけてあった。
『パンの店』
と書かれている。
「ここが…パン屋さんなの?」