クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
「廃校になった小学校を利用して、天然酵母のパンを作って売っているんだ。」
「まあ~!素敵ね!」
それで、校庭に車が何台も止まっていたのか。
ナンバーを見たら、関東地方もあれば日本海側の地方の名前も見える。
東海地方からの車もあるようだ。
「…遠くからお客様がパンを買いに来ているわ。」
ずんずん歩いて校舎へ向かう柊哉を追いかけながら、和優も小走りになった。
彼女がパタパタと走る音に気付いたのか、柊哉が歩くスピードを落とした。
『気を遣ってくれたのね…』
それから、二人はゆっくり並んで歩いた。
校舎に入ると、焼きたてパンの香りが漂ってくる。
「いい匂い…。美味しそうだな匂いだわ。」
柊哉に話しかける和優の表情は和らいでいた。微笑む妻を見て、柊哉は息を飲む。
『俺に笑いかけてくれるとは…、反則だな。』
無表情な和優も美しいが、微笑む和優はその何倍も輝いて見える。
妻が喜んでくれたのが、何よりも嬉しかった。