クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
「篠塚さん、おはようございます。」
教室の中に向かって、柊哉が声を掛けた。
かつて教室だった空間には何人も人影が見えた。
トレーを片手にパンを選んでいる人、白いエプロン姿の人…。
ここは田舎の小規模な学校だったのだろう。
校門から店までは、ほんのちょっと歩けば入れる位置だ。
店舗は、ふたつの教室を繋げたらしい。意外に広く感じる。
商品を並べた棚は、恐らく子供達が使った机を利用しているし、
キャッシャーの役割をしているのは、先生の教卓を再利用した物だろう。
廊下側には木製の机と椅子が無造作に置かれ、一応カフェの様だ。
レジ前には家族連れや女性客で列が出来ていたが、
カフェエプロンを掛けた丸顔の女性が愛想よく応対していた。
「やあ、本間君。いらっしゃい。」