クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす


 柊哉の母の献身的な看病で、篠塚は健康を取り戻した。
それから現在まで、篠塚家と本間家では付き合いが続いているそうだ。

丸顔の小柄な女性は健一の妻の篠塚麻美(しのづかあさみ)
彼が廃校となったこの小学校を気に入った頃に知り合った。

麻美はこの町出身で、開店準備の頃から店で働いていた。
朝から晩まで一緒に過ごすうちに恋人同士になり、やがて夫婦になったのだ。

夫はひたすらパンを焼き、妻は接客と営業を担当している。
夫婦で力を合わせて『パンの店』を盛り立てていた。

コーヒーを飲みながら、ゆっくりと柊哉が説明してくれたので
和優にも三人の関係が良く分かった。
彼がとてもリラックスしている理由も…。

『きっと、篠塚さんご夫婦の家庭的な雰囲気が彼に合っているのね。』

松濤に家には無いものがここにはあった。
篠塚夫婦が、二人して毎日積み重ねて来た暖かい空間。

羨ましくもあるが、和優独りではこの空気感は作り上げる事が出来ない。




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