クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
土曜日とあって、客は中々途切れない。
そのうち、イートインにもなるカフェスペースも込み始めた。
和優はゆったりとした動作ながら、テーブルを拭いたりコーヒーを出したり
自然にカフェを手伝い始めてしまった。
キッチンに掛けてあった黒のカフェエプロンも拝借して使っている。
女子高生より貫録があるせいか、客からも良く話しかけられた。
和優は片付けは出来ても、客とのコミュニケーションは苦手だ。
仕方ないので客に取り敢えず微笑んで、サッと女子高生に接客を変わってもらう。
そうやって、何とか急場をしのいでいた。
そんな和優の姿を、廊下に移動した柊哉は窓越しにじっと見つめていた。
『連れて来て良かったな…。』
そもそも、ここに和優を連れてくるつもりは無かった。
篠塚夫妻に『妻』と紹介するのがイヤだったのだ。
親友であり仕事仲間となる彼らに、『形だけの夫婦』だとは打ち明けられない。
まして、お嬢様育ちの和優が田舎町を喜ぶかどうかもわからなかった。