クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
『楽しい…。』
カフェでの雑用や、元は給食室だった建物でパンを焼く作業を見るのは
和優にとって、心弾む事だった。
篠塚夫妻が忙しすぎて、柊哉と仕事の件を話す時間が取れないまま
あっという間に午前中は過ぎてしまった。
柊哉の姿は見えないが、きっとこの周辺を散歩でもしているのだろう。
和優は思いつくまま、カフェを手伝っていた。
「あの、ありがとうございます助かります。」
和優がコーヒーを淹れていたら、バイトの女の子がそっと声を掛けて来た。
「あたし、アルバイト始めたばかりで慣れて無くて…。」
「そうだったの。」
「土曜日がこんなに忙しいなんて知りませんでした。」
「お客様が途切れないものね。」
「奥様、ずっとここにいてよかったんですか?ご主人とデートなんじゃ…。」
「大丈夫よ、主人は篠塚さんと仕事のお話がしたいみたい。」
「そうなんですか…。じゃあ、閉店まで無理かも。」
「どうして?」
「午後からはパン教室があるんです。」
「パン教室?」
「ここのパンの作り方を教えてもらえる教室ですよ。」
「まあ!作り方を教えてもらえるの!」
見つけた!
楽しそうな事を見つけたわ!