クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
廃校となった小学校を店舗にした『パンの店』から
歩いて5分もかからない古民家を改造した建物が、篠塚夫妻の住まいだった。
「先にダンナと柊哉君は帰ってるはずよ。仕事の話をするって言ってたから。」
「そうですか…。」
「何にもないけど、ゆっくりしてね!」
「ありがとうございます…。」
和優は波立つ心を笑顔で隠したまま、麻美と歩いてすぐの篠塚家に向かった。
篠塚家の外観は古民家そのものだったが、中はまったく違っていた。
玄関を入ると明るい土間があり、上がり框の先には広い板の間と座敷が見えた。
土間から真っ直ぐに進むと、台所になっているらしい。
「古い家を明るく使いやすい様にリフォームしたの。
でも昔のまま、囲炉裏は残したのよね。今夜はここでお魚焼きましょ。」
「まあ、珍しい…。昔話みたいですね。」
「皆さん、喜んで下さるの。あ、でもその前にお部屋に案内するわ。」
麻美が入ったばかりの玄関から、また外に出た。
ぐるりと古民家を回り込んだ先には古風な庭があり、
庭の奥には、こじんまりとした離れが建っていた。