クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
「お客様用に、バスやトイレも新しくしているからお気に召すといいんだけど。」
離れの中に入ると、何処かの和風旅館のように設えてあった。
照明も和紙を使ったデザインで、柔らかな光が部屋を明るく照らしてくれる。
リビングにはローテーブルとソファーがゆったりと置かれ、
窓際にはのんびりと寛げる座椅子があった。
開け放たれた襖の向こうは寝室で、布団ではなく低めのダブルベッドだった。
『ここに柊哉と泊まる?』
いかにも新婚に相応しい部屋だ。和優は息が苦しくなるのを感じた。
「和優さん、どうかした?」
「いえ、着替えたら母屋にお手伝いに行きますね。」
部屋にはすでに柊哉が運んでくれたスーツケースがあった。
彼はダブルベットが見えるこの部屋をどんな気持ちで眺めたんだろう…。
麻美が離れを出ると、和優はスーツケースから涼真と買ったカジュアルな服を取り出した。
ゆったりとしたパンツにフランネル生地のチェックのシャツだ。
いつもとガラリと違う服装で母屋での夕食に行く事にした。
その方が囲炉裏端での食事に相応しい気がしたのだ。
『柊哉さんはどんな顔をするかしら…。』