クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
 

 母屋の囲炉裏端での夕食は、和やかに進んだ。
残念ながら、柊哉はカジュアルな和優を見ても顔色一つ変えなかったが。

『似合ってないのかも…。』

自分より年下の涼真は似合うと言ってくれたが、ひと回り年上の柊哉にしてみたら
カジュアルなスタイルは見苦しいのかもしれない。

『気にしてはダメ。元々、嫌われているのだから…。』


囲炉裏で魚や野菜を焼いたり、自在鉤の先に掛けた鍋で温かい汁物を作ったり
麻美が手際よく調理する様子に、和優は見とれていた。
クルミとドライフルーツが入ったパンを少し炙って、クリームチーズをのせてみた。

「囲炉裏で炙るって美味しいですね。」
「でしょ、独特の香りがするのよね。」
「スゴイわ、麻美さん。手早いしお料理は美味しいし…。」
「毎日の事ですもん。」

囲炉裏を囲んで、夫とその日の出来事や色々な世間話をしながら食事するそうだ。

『羨ましい…。』

夫婦とは、そういう関係を言うのではなかろうか。

柊哉だって、篠塚夫婦が暮らしているような穏やかで心地よい家庭が欲しい筈だ。
無理やり与えられた妻とでは、何年暮らしても築けない関係だろう。


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