クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
無口な柊哉は、楽しそうにパンの話をする篠塚の話の聞き役に徹していた。
二人の前には地酒やらクラフトビールやら、選り取り見取りに並んでいる。
味見でもしているのか、すでに空きビンがいくつも並んでいた。
4人はゆっくりと時間をかけて食事を楽しんだ。
和優と麻美の会話は男性陣にも聞こえているだろうが、
男二人は仕事の話に夢中で、妻達のお喋りには加わらない。
麻美から、馴れ初めだの普段の暮らしぶりなど尋ねられて和優は困っていた。
実際、何も無いのだから曖昧に笑ってごまかすしかない。
いっこうに麻美との話を止めてくれない柊哉が恨めしく、
楽しかった食事の時間も次第に苦痛に思えて来た。
「お腹いっぱいです。ご馳走様でした。」
「あら、もういいの?」
「こんなに頂いたのは久しぶりですわ。」
「じゃあ、甘いものでも…。」
早く柊哉達から離れたくて、和優は必死でデザートはお断りした。
「いえ、ホントにもう十分なんです。私はお部屋でゆっくりさせていただきますね。」
「そう?柊哉君は、まだダンナと話があるみたいだし…。」
「ええ、三人でお仕事の話をなさって下さい。私は大丈夫なので。」
独りで離れに帰すのが可哀そうになったのか、麻美が夫の方を見た。
「じゃあ、僕たちの話も続きは明日にしよう。」
篠塚の提案に、柊哉が今まで見た事も無いような驚いた顔をした。