クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
和優は離れの窓際に置いてあった座椅子に座り、外を見た。
真っ暗だ。
流石にガラス窓越しでは、星もあまりよく見えない。
同じ静けさでも、松濤の家の暗さや怖さとまるで違っている。
こんなにも暗いのに、静寂で穏やかな夜は初めてかもしれない。
ぼんやり窓に映る自分の顔を見ていたら、
柊哉がバスルームから濡れた髪をタオルでゴシゴシと拭きながら出て来た。
浴衣姿が和室に良く似合って、二人で温泉宿に泊まっているみたいだ。
「お先に。」
「はい。」
和優もシャワーを浴びようと、座椅子から立ち上がった。
足が痺れたわけでもないのに、クラりと身体が傾いてしまった。
「あっ!」
転びそうになった和優を、がっちりと柊哉が受け止めてくれた。
「気をつけろ。」
「はい…ありがとうございます。」
シャワーを浴びたばかりの体温が、浴衣地を通して和優に伝わってきた.
『熱い…。』
人間の体温はこんなにも熱を持つのか…。