クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
自分の手で、和優を本当の意味で妻に出来たらどんなに嬉しいか…。
だがそれ以上に、自分の欲が彼女の寿命を縮めてしまうかと思うと恐ろしい。
『この半年我慢したが、もう限界だった…。』
柊哉は、自分自身の弱さに呆れていた。
どんな表情でも、愛おしい妻。
今も自分の横で眠っている。
その頬に、額に、髪に触れる。
「ん…。」
背をむけていた和優が柊哉の方へ寝返りをうった。
彼の右腕が心地良いのだろうか、しがみつく様に抱きしめている。
それがまた、たまらなく愛しい。
空いている左手で、顔にかかる髪をかき上げてやる。
ふと見ると、きっちりと全部を留めていたシャツ襟のパジャマの胸元…。
上から二つともボタンが外れていた。愛撫が強かったせいだろうか。
コットン生地でもくっきりと浮かぶ蕾やふくらみより彼の目を捉えたのは、
白い肌に不似合いな、うっすらと残る肌色のラインだ。
『手術の痕…。』
これを抱えて和優は生きて来たのか…。思わず頬ずりしてしまった。
『君が、生きていてくれて良かった!』
だから、巡り会えたのだ。
シャツの胸元を広げ、柊哉はその傷痕に唇を寄せた。
どんな愛撫より、優しいキスだった。
『愛している…。』
柊哉は胸の奥で呟いた。