クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
何事もなく、和優の計画は進んでいた。
涼真と二人で週末ごとに甲府に通う生活も、ルーティンになれば疲れる事も無い。
『柊哉さんに内緒で、パン作りの腕を磨きたい。』
と言って篠塚夫妻の協力をお願いしたから、きっと秘密は守ってくれる筈。
もし彼らが柊哉に話しても、彼は妻の習い事など興味も無いだろうから
放っておいてくれるだろう。
季節は秋から冬になった。
『パンの店』の辺りは、雪は少ないそうだが冷え込みは厳しかった。
「年末年始はどうするの?和優ちゃん。」
「我が家では特に予定はありませんよ、麻美さん。」
「そうなの?なら、柊哉君とこっちに来る?」
また、あの離れに泊まるのは無理だ。
「ごめんなさい、彼の仕事の関係で東京から離れられないんです。」
「そうよねえ。ごめんなさい。」
「いえ、お誘いいただいて嬉しいです。」
「あの、金髪のカレは?」
「さあ…実家に帰るのかな?」
毎週通っているうちに、和優はパン工房の職人たちと、
涼真はカフェのアルバイトや常連客と親しくなっていた。
「うちのバイトさんたち、カレの事詳しく知りたがってね。」
「ああ…。そうですよね、女子高生から見たらアイドルみたいだから。」
「和優さんもモテるわねえ。柊哉君とか、涼真君とか…。」
「いえいえ、さっぱりです。」
「じゃあ、年末年始は旦那様とゆっくりしてね。」
「…ありがとうございます…。」