クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
麻美の申し出を断ってしまったが、柊哉は年末年始をどう過ごすのだろう。
結婚して初めてのクリスマスやお正月だが、彼からは何も聞かされていない。
和優からも、どうするかは尋ねていない。
『会わないんだもの、聞けないわよね。』
せめて、家政婦の田辺や父にはプレゼントを贈りたい。
少しは上達した手作りのパンも味わってもらいたい。
心の中では家族一緒の楽しい団らんを思い描くのだが、
表情の乏しい和優がそんな事を考えているとは誰も気付かないだろう。
甲府からの帰り道、和優は涼真に予定を尋ねてみた。
「涼くんはお正月は実家なの?」
「そうだねえ…。大晦日はあっちが書き入れ時だからなあ。
とりあえず、寝正月したいよ…。」
「そうなんだ。年末は忙しそうね。」
「正月が過ぎてから、館山に帰るつもりだよ。和優ちゃんも来る?」
「ああ…久しぶりにおじさんやおばさんに会いたいなあ…。」
「我が家はいつでも、和優ちゃんの事大歓迎だよ。」
「じゃあ、一緒に連れてってね。ご挨拶したいから。」
「オーケー!楽しみだあ~。」
その時、Bluetoothに着信があった。田辺からだ。
『もしもし、奥様でいらっしゃいますか?』
和優の携帯電話へだから車内中に会話が聞こえる。