クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
『奥様、今どちらでしょうか?』
「もうすぐ家に着きますけど…そろそろ田辺さん上がる時間でしょ。」
『たった今、大旦那様がお見えになりまして…。』
「お父様が?」
『お近くまでいらしたので、寄ってみたと仰せです。』
「わかりました。小西さん、時間延長になりますが、私が帰るまでお願いします。」
そこで、電話は切れた。
「和優ちゃん、いつもは僕のコーポまで送ってくれるけど急がなきゃ。」
「ええ、でも…。」
「和優ちゃん家へまっしぐら!」
「ゴメンね、涼くん。」
「もうすぐ着くから安心して。」
「ええ…。何事かしら、お父様が急に来るなんて…。」
仕事人間の父がわざわざ松濤の家に来るのだ。
あまりいい予感はしなかった。
しかも、柊哉は不在。今、彼が何処にいるかも和優は知らなかった。