クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす


柊哉(しゅうや)とは、結婚して半年になる。

和優(なゆ)が女子大を卒業すると同時に式を挙げた。
本間柊哉(ほんましゅうや)こそが、高遠ホテルグループの経営危機を救ったIT企業の社長だ。

10年前、何処で実影に気に入られたのか、彼は高遠ホテルの改革案を任された。
大学在学中にシステム開発の会社を起業した柊哉は、
まだまだ駆け出しの社長だったが、その大仕事を喜んで引き受けた。

柊哉とその仲間は、あっという間にホテルグループのネット予約システムを完成させ
ホテル内の様々なソフトウエアも作り上げ、仕事の効率アップに繋げた。

そして、柊哉が高遠ホテルの改革案の立役者という実績が広く知られると
若手IT企業の社長としても人気が高まった。

経済界やマスコミで大々的に柊哉の会社が取り上げられると
生まれ変わった老舗ホテルへの関心も高まり、高遠ホテルは経営危機から脱したのだ。

実力を示した彼は、高遠グループの顧問に就任し、やがて一人娘の婚約者になった。
このサクセスストーリーもマスコミに受け、結婚式の写真が週刊誌に載ったくらいだ。

柊哉は、和優よりひと回り年上の35歳。

大人の成熟した魅力と野性的な風貌を併せ持つ。
おまけに自身の会社、『HONNMA』を急成長させた手腕を持つビジネスマンだ。

実影の熱意に押し切られた形で、彼は和優との結婚を承諾したのだろう。
少なくとも、和優はそう信じていた。
何しろ彼と和優は夫婦といっても、未だに形だけの関係。

夫に触れられた事が無い和優は、『彼に嫌われている』としか思えないのだ。


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