クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
和優が自宅に帰ると、玄関先には確かに父の黒塗りの大きな車が止まっていた。
涼真がその後ろに車をつけてくれたので、和優は急いで降りた。
「涼くん、何か食べていかない?疲れたでしょ。」
「ありがたいけど、僕がお邪魔していいの?」
「いいわよ。父の事は覚えてるでしょ?」
「もちろん!よく病室におもちゃを抱えて来てくれたもん。」
和優は涼真を連れて玄関から入った。
「お帰りなさいませ。」
「田辺さん、残ってくれてありがとう。
申し訳ないのだけれど、彼に何か食べさせてあげてちょうだい。」
「は?」
田辺は、和優の後ろからひょっこり姿を見せた金髪の青年を見て目を丸くした。
「きっと、お腹空いてると思うのよ。」
「ですが…。」
「大丈夫。父も知ってる子だから。」
「は、はい。ではこちらへ…。」
「水口涼真と言います。おじゃまします。」
ホストクラブとは別人の様な礼儀正しい青年ぶりを和優は初めて見た気がする。
「涼くん…。普通に喋れるのね…。」
馬鹿にするなという表情で、涼真は田辺の後について行った。