クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
和優が玄関まで父を見送りに出たら、
涼真も軽食を食べ終えて帰ろうとしたところだった。
二人は玄関ホールでばったり顔を合わせた。
「ご無沙汰しております。高遠社長。」
「ああ、君は…すっかり大人になったね。涼くん。」
「はいっ。あの頃は沢山おもちゃを頂きました。ありがとうございました。」
「立派になって、何よりだ。」
「来年は、大学3年生になります。」
「そうか…そろそろ就職が気になる頃だな。志望は?」
「まだ決めかねています。」
「ハハッ。高遠ホテルも候補に入れてくれたまえ。」
「そうですね、考えます。」
「じゃあ、また。」
「失礼いたします。」
深々と頭を下げてから、先に涼真が玄関から出て行った。
「良い青年になったね。」
「はい。小学生の頃から知っていますから…。」
「では、私も帰るよ。」
「お気をつけて、お父様。」
父が帰るとホッと一息ついた。結局、父は何の用事だったのだろう。
ただ、夜遊びの噂を聞いて確認しに来ただけ?
和優の胸に、一抹の不安が残った。