クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
年末年始は慌しく過ぎた。
クリスマスの前までは甲府に出掛けたが、涼真も店の仕事が忙しい時期になり
和優も一応主婦としてしなければならない事がある。
年末は柊哉も忙しかったのだろう。
やはり家に帰ってはこなかった。
田辺にも年末年始は休んでもらったので、年越しは和優一人になってしまった。
寂しくテレビで除夜の鐘の音を聞き終わった頃、柊哉が帰宅した。
「おかえりなさい。あ、明けましておめでとうございます。ですね。」
「遅くまで起きていて大丈夫か?」
「はい。新年のご予定をお聞きしていなかったので。」
「そうか…。」
柊哉と二人で高遠の父に会いに行く日を相談したが、相変わらずだ。
彼の態度はよそよそしいし、口数も少ない。
ただ、暫く実家の用事で佐渡との行き来が増える事、
本間の母が昔お世話になった家の娘さんの面倒を、
松濤の家で見る事になったとだけ聞かされた。
『珍しい…』
いつもなら田辺から伝え聞くだけなのに、今回はきちんと柊哉が話してくれた。
『それだけ、お義母様がお世話になった家の方なのかしら…?』
娘さんと言っても、和優より10歳は年上だ。
柊哉の高校の後輩らしい。
家政婦の田辺に当分の間は泊まり込みで来てもらうから、
その人の世話は田辺に任せておけと、和優は言われた。
「わかりました。」
本間の義母とも、結婚式以来会っていない。
季節の贈り物を柊哉の名前で送っているくらいだ。
『お義母様は、私達の関係をご存じないでしょうし…
その人がいる間、夫婦らしく見せるにはどうすればいいのかしら?』