クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす


「プロの方に、一度食べてみて欲しくて…」

「和優ちゃん、お嬢様なのにパン屋になるの?」
「母さん、奥様(・・)だよ。」
「へえっ!和優ちゃん、結婚してたんだ。」

「パン屋さんになれるかどうかわかりませんが…自分の力を知りたくて。」

「そりゃあ、趣味を超えてる出来だと思うよ。」
「そうね。商売なら採算とか考えなくちゃいけないけど、それナシなら文句なく美味しい。」

美味しいと言われたのは嬉しかったが、商売になるか考えた事は無かった。

「採算…そうですね、現実は厳しいですよね。」

気落ちした和優に涼真が優しく声を掛けてくれた。

「和優ちゃん、せっかく頑張ってるんだ。趣味で続けてみれば?」
「涼くん…このパンを出すカフェとか、どうかなあ…?」

「まじ、考えてるんだ!」

「焦ってるわけじゃないけど、何か出来ないかな~って思ってるの。」

「確かに…この天然酵母のバンズに、お袋の作る総菜パン用の
 ポテサラとか卵サラダとか挟んだら旨いよきっと!」

「そうだね、ハンバーガーにしたらもっと若い子に受けそうだ。」
「お袋、乗り気じゃあねえか!」

「じゃあ、その気になったらまたおいで。相談くらい乗ってあげるよ。」

妙子はすっかり商売人の顔になっている。

「おばさん、ありがとうございます。」





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