「お前は一人でも大丈夫」ですって?!~振る際の言葉にはご注意下さい。
素顔のドキュメンタリー
*
それから三日後。
千夏は何となく気まずい日々を過ごしていた。陽翔の顔を見るたびに落ち着かず、顔が火照るのを押さえられずにいた。目が合えば思わず逸らしてしまうし、これでは仕事に支障がが出てしまうと、必死に耐えようとした。だが、しかし心臓が言うことを聞いてはくれない。
落ち着いて。
平常心よ。
年下は趣味ではなかったでしょう。
そこへ磯田が眼鏡をクイッと上げながら、社長室へと入って来た。
「社長、何度もノックをしたのですが、入ってもよろしいですか?」
すでに部屋の中に入ってきているが、入室の許可を磯田は聞いてきた。
「ご……ごめんなさい。何か用だったのかしら?」
「ええ、社長に一日密着したいというテレビ局の方から連絡が来まして、一度お話だけでも聞いてもらえないか、と言うことだったのですが、どうされますか?この会社の宣伝にもなりますし、良い話しではないかと思われるのですが……」
「一日密着……ドキュメンタリーみたいなことかしら?って言うか私なんかでいいのかしら?」
「うちは今かなり業績を上げていますからね。それに今話題の美人女社長とくれば、メディアも黙ってはいられないでしょう」
美人社長って……。
あまり乗り気にはならないけれど、会社のためになるのなら仕方ないか。
「分かったわ。とりあえず話だけでも聞いてみるわ」
「そうですか。では、私からテレビ局の方には連絡を入れておきます」
「お願いね」
「かしこまりました」
仕事以外に仕事が増えたわ。
はぁー。
面倒くさい。
一礼しながら部屋を出て行く磯田を見つめながら、千夏は溜め息を付くのだった。