「お前は一人でも大丈夫」ですって?!~振る際の言葉にはご注意下さい。


 そう思った時、心の奥底にしまい込んでいた箱の蓋がゆっくりと開いた。


 私は……。


 私は陽翔くんから離れたくない。

 一緒にいたい。

 私は陽翔くんのことを……。



「陽翔くん帰ろうか」


 ゆっくりと立ち上がった千夏は陽翔の手を取った。そしてこれが答えだと言わんばかりに千夏は陽翔に笑いかける。すると、達哉が低く冷たい怒声を上げた。

「千夏、きみは俺ではなく、そんな子供を選ぶのか?そんな子供の何処が良いんだ?ヒモにでもするつもりか?」

 この人は何処まで人を馬鹿にすれば気が済むのか……私はこんな人の何処が良かったのだろう?考えてもなにも浮かばない。

「達哉、陽翔くんは子供なんかじゃないわよ。私の大切な人なの」

 そう言って千夏は陽翔の胸に飛びつき、後頭部に右手を添え引き寄せると、陽翔の唇にキスをした。

 唖然とする達哉に千夏は凜とした態度で向き合った。

「達哉、私はあなたじゃなくて、あなたがバカにした陽翔くんを選ぶわ」

 そう言うと千夏は陽翔の手を握り、レストランから出て行った。




 それを達哉は歯を食いしばり、憎悪に満ちた顔で睨みつけた。

 
 ふざけるな……。



 こんな所で恥をかかせやがって、



 おぼえていろよ。









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