「お前は一人でも大丈夫」ですって?!~振る際の言葉にはご注意下さい。
番外編 磯田くんの事情
* 【番外】磯田くんの事情 *
磯田くんと恋人との【BL】な小説となっています。
胃がキリキリと痛むのを感じ、磯田は腹部に手を当てた。最近こんな風に胃が痛むことが度々あり、胃薬が手放せなくなっていた。胃が痛む原因は分かっている。
それは如月陽翔のせいだった。彼は如月グループの社長なのだが、何を考えているのか、突然秘書にしてほしいと言ってきた。俺は思わず「はぁ?」と変な声だ出てしまったが、陽翔さんは計画を聞いて欲しいと、電話ごしでも分かるくらい真剣な声で言ってきた。
社長を自分に振り向かせる計画を……。
社長を振り向かせるために俺の協力が必要だと……。
しかし俺は陽翔さんが話し出す前に断ることにした。こんなことに協力して社長の耳にでも入ってしまったら、それこそ信用問題に関わるからだ。
「陽翔さん申し訳ありませんが、私は協力することは出来ません」
本人が目の前にいるわけでも無いのに俺は頭を深々と下げ、この話を断った。しばらくして、電話が鳴り受話器を取ると、落ち着いた男性の声が……。
この声……。
「磯田くん久しぶりだね」
磯田は電話の主である人物に驚愕した。
「如月会長!」
「磯田くん、息子の話を聞いてもらえないだろうか?。取引と言っては何だが、拓人(たくと)との件なんとかしてあげるよ」
そう言ってきたのは陽翔の父親である如月グループ会長、忠信(ただのぶ)だった。
拓人は俺が今付き合っている恋人で、陽翔の従兄弟にあたる。以前、拓人に抱きしめられている所を忠信に見られてしまったため、二人の秘密がバレてしまっていた。しかし忠信はそれを誰かに言うこともなく黙ってくれている。
「拓人との件をどうにかするとは具体的には、どうするおつもりですか?私はこのまま放っておいて欲しいのですが……」
「そうか……見合い話があると言ってもか?」
「…………」
見合い……。
そんな話は拓人から聞いていない。
「やはり知らなかったのか……」
「…………」
何も言わない磯田に忠信は優しく話しかけた。
「どうする。このまま拓人とのことを諦めるか?」
諦める?
それは拓人と別れると言うことか?
そんな事無理だ。